花火
食事もひと段落つくと、おもむろに話し出したのはお父さんだった。テーブルの上には三本のビール瓶が、お役御免と立ちつくしていた。
「これからのことに関して、拓哉君には話しておかなくてはならないな。これから春香は、在宅ケアという療法を通じて病気と闘っていく。いや、向い合って生活していく。拓哉君には在宅ケアと言っても、ピンとこないだろうな」
お父さんの口から聞かされた在宅ケアとは、以下の様な内容だった。外科手術をするでもなく、抗癌剤治療をするでもなく、延命治療をするでもなく、ただ痛みを和らげ、終焉を住みなれた自宅で迎える。週に何度かヘルパーの方やボランティアの方が訪れ、ドクターも週に何度か訪れてくれるとのことだ。二十四時間体制でドクターは対応してくれ、電話やメールでの問い合わせに加え、いざという時は駆けつけてくれるそうだ。
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