神威異伝



「“負けそうになったら逃げろ”?そんなの、嫌に決まってるじゃない。あたしは……あいつらに仕返してやりたいのよ」


あの時、まるで歯が立たなかった。

冷たい微笑を携える……あの男に。


「日向もそう、逃げるなんて……絶対にしないわ」


十夜は困った様に眉をひそめた。

そんな十夜を、理緒の強い眼差しが見つめる。


「あんた、さっき言うつもりだったでしょ“自分が死んでも悲しむ人なんかいない”…って」


十夜は少しうつ向き、黙ったままだった。

……それが肯定の意味なんだと、理緒は理解する。


理緒は何も言わず、十夜の横を通り抜け、十夜に背を向ける形で口を開いた。



「―……そんなの、違うに決まってるでしょ?おじいちゃんも、日向も白月村のみんなだって……悲しむわよ」


十夜が振り返った。

理緒は、十夜に背を向けたまま…振り返らない。


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