神威異伝
「理―……」
「それにっ」
口を開きかけた十夜よりも早く、理緒が呟く。
「あたしだって……悲しく、なる…わよ」
十夜は目を点にした。
今、目の前にいる理緒には背を向けられているから顔は見えない。
…………だが、耳が真っ赤なのは十夜からでもハッキリと見えたのだ。
「あ、あんたみたいに脳天気で馬鹿な奴がいなくなったら……何か、寂しくなるっていうか…その……」
焦った様に早口で言う理緒に、思わず十夜は―……
「……っ、あははははははは!!」
声を思いっきり出して笑った。
理緒が顔を真っ赤にしつつ、眉をしかめて振り返った。
「あ、あんたねぇ―…」
「そうだよな、あんなの……俺らしくねぇよな」
十夜が小さく笑いながら、理緒の右隣に並んだ。
理緒は十夜の方に顔を上げない。
「確かに、さっきのは弱虫か根暗な奴が言う“台詞”だな。……あんなの、俺が言う“台詞”じゃあないなっ」
意見を求める様に理緒に笑いかける十夜だったが……理緒は前を向いたまま、反応しない。