神威異伝
理緒は視界の中に十夜が入っていないとばかりに、ただ前を見ている。
「理緒……?」
十夜が理緒の目の前で手をヒラヒラと振ると、理緒が方をぴくりと揺らした。
「え?あ……な、何?」
「……いや、話しかけても理緒が何も言わねぇからさ。どうかしたか?」
一瞬目を見開いた理緒だったが、直ぐに右目押さえ呟く。
「ごめん……少しボーッとしてたみたい」
「そっか。まっ、大した事じゃねぇし気にすんな」
そう言って十夜が歩き出すと、理緒は十夜の少し後ろを歩いた。
不意に、理緒が口を開く。
「ねぇ、十夜。さっきの話なんだけど―……」
「…あぁ。さっきのは忘れてくれ」
理緒の言葉を遮る様に、十夜が言った。
首を傾げ、理緒が十夜に尋ねる。
「何でよ?」
「もう良いんだ。だって――……」
そこで一旦区切って、十夜が首だけ振り返った。