神威異伝



嬉しそうに微笑んで、十夜が口を開いた。


「もし、俺が死んだら悲しんでくれる……照れ屋で意地っ張りな奴がいてくれる、って分かったからな」


理緒の足が止まった。

十夜も足を止め、体ごと振り返る。



……理緒の顔が少し赤くなっていた。


「あ、あたし……悲しくなるって言ったけど、その…そういう意味じゃなくて―…」


必死に理緒は口を動かすが、その声は普段の理緒からじゃ考えられない程小さくて、たどたどしい。

そんな理緒を見つめ、十夜が……ニヤリと笑った。


「あれ?俺さっき……理緒なんて一言も言ってないんだけどなぁ」
「っ!!?」


何か勘違いしたか?と十夜が言うと、理緒が顔を真っ赤にして拳を振り上げた。

その拳が振り下ろされる前に、十夜は一歩後ろに身を退いた。

…もちろん、理緒の拳は空を切る。


十夜は理緒に背を向け、すぐさま走り出した。

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