神威異伝
「こらあぁ!!待ちなさいっ、十夜!!」
理緒も十夜を追いかける様に走る。
首だけ振り返り、十夜が笑う。
「ぜってぇヤだね、殴るつもりだろ?」
「一発だけで済ませてあげるから止まりなさい!!」
「無理無理っ、理緒の痛てぇもん」
「当たり前でしょ!!?痛くなるように殴るんだからっ」
「うわっ、怖えぇー」
「自業自――……」
『止まれ、そこの二人』
二人の言い合いを、低い声が遮った。
突然聞こえた声に、二人は思わず足を止める。
十夜が素早く辺りを見渡すが、人の気配や殺気は感じない。
―……その代わり、人ではない何かの気配を十夜達が進む方向、滝の方から感じた。
『それ以上こちらに進むな、来た道を戻るがいい』
声は姿を見せる事なく、そう言った。
十夜がそれに応える。
「……それは出来ねぇな。俺らは、この先に用があるんだよ」
理緒は、周りの様子を警戒する。