神威異伝
二人はなるべく音を立てない様に、ゆっくり荷物を下ろす。
声は更に声を低くし、呟いた。
『忠告は、一度までだ。……それでも聞かぬつもりか?』
十夜は、漆梁に手をかけた。
「あぁ、そのつもりだ」
『……愚かな』
不意に、前方にある茂みの一つから“何か”が姿を見せた。
狼。
その背丈は、大の大人程で理緒よりも少し高い。
毛は、青がかった黒。
瞳は金色に輝いている。
二人は目を見開いた。
この狼の姿を、二人は聞いていたから。
二日前、白山村の宿の主人が言っていた白山に住むという――……
「黒狼……?」
誰に言うでもなく、理緒が呟いた。
『ほぅ……私の存在を知る者がいたか、白月村の者か?』
先程の声の主……黒狼が小さく笑った。
「しゃ、喋った!!?」
理緒が思わず叫ぶ。