神威異伝
溜め息を吐き、黒狼が口を開く。
『私はそこらの獣とは違う、人間の言葉ぐらい話せる』
「へぇー便利だな……あ、俺ら白月村の人間じゃねぇぞ。旅してんだ」
十夜がそう言うと、黒狼が納得した様に呟いた。
『成程、道理で私の姿を見ても逃げない訳だ。……まぁ、白月村の人間でなくても普通なら逃げて行くがな』
「俺らが初めてか?あんたを見ても逃げないのは」
『……昔、一人いた。私を見ても逃げなかった者がな』
そう呟いた黒狼が、十夜にはどこか悲しそうに見えた。
十夜と黒狼が話している間に、理緒が短刀を構え様とした……が、十夜がそれを片手で制した。
「十夜?」
理緒が小声で話しかけると、十夜が黒狼から視線を外さないまま言った。
「あいつは大丈夫だ。俺らを攻撃なんてしない」
目を点にする理緒をよそに、十夜が更に続けた。
「こんだけ喋ってたんだ。攻撃するつもりなら、とっくに仕掛けて来てるさ」