神威異伝
長身で細身な体。
青がかった黒髪をみつあみにして、一つに束ねている。
その長さは腰に届く程。
少し長めの前髪の奥で光る、金色の瞳。
「……それが、あんたの本当の姿なのか?黒狼」
十夜がそう聞くと、黒狼は首を横に振る。
『違うな。……この姿も、あの姿も、どちらも本当の私だ』
「“人に化ける狼がいる”……か、成程な」
小さく息を吐き、納得した様に日向が呟いた。
黒狼が暁を軽々と抱き上げ、口を開く。
『……色々と話す事がありそうだ。立ち話もなんだから家に来るといい』
「良いんですか?」
理緒が尋ねると、黒狼は黙って頷く。
背を向け、歩き出そうとした黒狼に十夜が声を張った。
『なぁ!!……あんた、名前はなんて言うんだ?』
首だけ振り返り、黒狼が口を開く。
『……私は澪だ』
「そっか、俺は十夜。こっちが理緒で、あっちが日向って言うんだ」
十夜が、理緒と日向を指差して言った。
『……良い名だな』
そう呟き、黒狼……澪(れい)は歩き出した。