放浪者の恋-single planet-
4. 恋の確認作業

1.

一週間が、ゆっくりゆっくり、やっと過ぎて、彼の帰国の日がやってきた。

服、靴。迷う迷う。

彼の好きなアロマ。疲れを、癒すやつ。

待ちきれず、東京駅まで迎えにいく。

改札に姿を見せた彼は、ちょっとだけ、疲れた顔をしながらも元気そうでほっとした。

外国に行くことの開放感は、日本では忙しすぎる彼に、精神的な休息となるのかもしれないな。

「おかえりー!」

思わず、だきつく。
ここが、東京駅だってことは、わたしの頭からすでに消えていた。

「ただいまー!」

でも、フランスナイズされた彼は、もっとウワテで、キスを返してきた。

おかしい。
まるで高校生に戻ったような気分だ。

でも、30女と50男。二人とも、けして若くはない。

無事帰国のお祝いに、蕎麦を食べにいく。
こんなに、嬉しそうな顔で人に見つめられるのは久しぶり。

「うまい!食べたかったんだよー。蕎麦。やっぱ日本、最高だな。」

子供みたいに言う。

蕎麦をずるずるすする彼を見ていたら、言わずには、いられない。
よし、言ってしまおう。

「一週間が長かった。あなたのことばっかり、考えて、どんな本や映画を見ても、音楽を聴いても、感動して涙腺がゆるんじゃって、仕方ない感じ。」

真っ昼間から、われながら恥ずかしい、愛の告白だ。

顔から火がでそうになったそのとき、笑いも、ちゃかしもせずに、しみじみって感じで、うなずきながら彼が言った。

「いいね。俺も。」

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