流れ星との約束
「お前……まさか……」
 
「剃る」
 
 
 遥斗は表情を変えずに答えた。
 
 
「いや、まあ野球部入んのやったらいつか剃らなあかんけど……」
 
「だから今日剃る」
 
「遥斗……。水原からも何か言ってくれよ」
 
「良いんちゃう? 遥斗が剃りたいんやったら」
 
 
 宗が光に助けを求めたが、彼女は笑顔でそう答えた。だが、たとえ光が遥斗を説得しようと、彼の意見は変わらない。
 
 遥斗は、手を胸の前で合わし、軽く頭を下げた。
 
 
「貸すのは良いんやけどさ……。後悔すんなよ?」
 
「分かってる」
 
 
 交差点に差し掛かると、遥斗は足を止めた。本来なら、宗だけが別れるのだが、今日はバリカンのこともあるので、遥斗は宗について行く。
 
 
「光、俺の家の机にオニギリがあるから、1時に武蔵公園まで持ってきてくれへん?」
 
「分かった。どうせ見に行くつもりやったし。じゃあ後で」
 
 
 走っていく光の後ろ姿を見送って、遥斗は宗と共に歩き出した。
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