あたしの執事
「鋭くなってきたわね。そうよ。元はちゃんと愛情あって付き合ってたのよ。私、何もないことに、精神貫きたくない主義だから」


今、初めて梓さんが凄いと思った。

多彩な面と、美しさの面ではそれなりの尊敬はあったが、感情面でこんなに吸い込まれるなんて、思ってなかった。


「長くなったわね。そろそろお開きにしましょうか」

「あ、ありがと…っ!」

「礼を言われることなんて何もしてないわ。玲をよろしくね」


そう言った梓さんは静かに、あたしの部屋を出て行った。


「不思議な人だったな」


指を絡め、腕を大きく伸ばす。華麗な梓さんは今でも目に焼きついていた。


「千ー秋」


ノックもなしに入ってきた如月。なぜこんな奴と梓さんが、釣り合ったのか…


「何か梓に変なこと吹き込まれてねぇ?ちゃんと元の可愛い千秋のまま?」

「…どうしてアンタはそう、恥かしいこと平気で言えるかな…」

「だって心配じゃないですか。彼氏としては」
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