Bloody Kiss
いつの間にか男は数歩の場所に立っていた。ゆっくり流れるような動作で更に距離を詰めてくる。

「押さえなさい」

男の声がした瞬間何かに拘束された。

「くっ……!」

「えっ!?」

耳元で恢の粗い呼吸が聞こえる。

混乱しながらも自分を拘束しているものを確認する。腰元に回されている右手、私の両手を拘束する左手。私を拘束しているのは動けないはずの恢だった。

「何でっ!?」

信じられなくて恢の顔を見る。
苦しそうに歪んでいる表情。紅く光る瞳。

「クソッ!」

吐き捨てるような言葉と共に拘束している手に力が入る。

「痛っ!」

容赦なく掴まれた手首がギリギリと音を立てるように痛んで思わず顔を歪める。

「そのまま押さえていなさい」

男の声はもうすぐ側だ。
逃げなくちゃってわかっているのに身動きがとれない。さっき男に掴まれていたのと同様にびくともしない。

痛みの条件反射か涙で目の前がぼやける。

痛い。
怖い。
苦しい。
助けて。

誰か助けてっ……!

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