Bloody Kiss
急に顎を掴まれて強制的に上を向かされる。

「手荒な真似をお許しください。姫様が大人しくしていてくださればすぐに終わります」

目の前には男の姿があった。丁寧な言葉遣いとは裏腹に強引な動作。

「その手を……離せっ……!」

恢が苦しそうに途切れ途切れの言葉を発する。それを聞いた男は、声を出して笑った。

「お前が言いますか。姫様を拘束しているお前が」

心底面白そうに笑っている。

「面倒ですね。意識を奪ってしまいましょうか」

男は恢の頭に手を伸ばしたが触れる直前でピタッと止まった。

「見物人が居なくては面白くありませんね。お前には見届け人として全てを見てもらいましょう。その代わり発言は許しません。黙って見ていなさい」

相変わらずの笑顔で告げる。恢が何か言おうとしているのにそれが声になることはなかった。

「さて、気を取り直して。目覚めの儀式を始めましょうか、姫様」

恢と同じ紅い瞳。見詰めたくないのに、逸らせない。

「何でこんなことっ……。姫って何なのっ!?」

男は驚いたように目を見開いた。

「おや、姫様はお忘れですか?」

忘れる?まだ何か忘れてるの?

「人間の時間で言うと、二年前……でしたか」

二年前。
それは全ての始まり。
それを知っているのは……。

「あぁ、そう言えばあの時は変装していたんでしたね」

男が一度頭を振ると見覚えのある顔が現れた。

「誕生日プレゼントは気に入っていただけましたか?」

忘れるはずがない。
私の家族を奪った吸血鬼。

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