Bloody Kiss
最初の恢の反応で気付くべきだった。この男が全ての元凶、私達が追っている吸血鬼だったんだ。

「よくも、私の家族を……!」

気が狂いそうだ。色んな感情が入り交じってぐちゃぐちゃになる。

「何を仰っているんですか?姫様の家族を殺めたのは姫様御自身でしょう?」

「っ!?」

紅い瞳に映る怯えた自分の姿。それがグニャリと歪む。



『来ないでっ!イヤーっ!!』



異常に怯える女性。
女性の瞳に映る紅い瞳の化物。
血に魅入られたその化物は――…。



「私……?」

女性はあの日殺された母親、その母親の瞳に映っていたのは紛れもなく私自身の姿。
これが記憶だとするなら……。

「うっ……!」

また目の前が歪み始める。



『離せっ!バケモノっ!』



耳元で父親の声がする。
窓ガラスに映るのは父親の後ろ姿とそれを抱き締めている少女。父親の首元に顔を埋めて紅い瞳を見開いている。力なくグッタリし始めた父親から手を離すと彼はそのまま崩れ落ち視界から消える。
残ったのは紅い瞳で恍惚の表情を浮かべる血塗れの私。



「いやっ!もう見たくないっ!」

ギュッと目を瞑った。

これが何の映像かはわからない。私の記憶なのか、男が見せているまやかしなのか……。でもそんなのどうでもよくて、ただもうこれ以上は耐えられない。

「目を背けても無駄です。それは姫様の脳裏に焼き付いた記憶。紛れもない真実です」

信じない。こんな悲惨な出来事が真実だなんて信じられるはずない!

「さあ、お目覚めの時です、姫様」

グイッと顎を更に上げさせられる。

「本来のガーディアンではありませんので再び惨劇が起こるかもしれませんね」

惨劇という言葉に思わず目を開けてしまった。目の前には笑顔の男と赤い液体の入った小瓶。

ゆらゆらと揺れる赤。

男が小瓶の蓋を開ける。
その液体の正体はおおよそ予想がついている。近付けられた小瓶から鉄のような臭いが漂ってきた。それが予想通りだと物語っていた。

口元に小瓶が近付く。押さえられていて逃げることもできない。

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