Bloody Kiss
「アリア様、傷の手当てを」

「大丈夫、もう塞がってる」

隣に控えていたリートが傷を負った手を心配そうに見ていた。その心配を晴らすように溢れ出た血を拭いとり、もう傷が塞がった手のひらを見せる。綺麗になった手のひらを見てもまだその表情は晴れない。

「アリア様のお体はもう貴女一人のものではないのですから、大事になさってください」

「……うん、わかってる」

姫はたった一人の王子様のためだけに存在している。私は彼に全てを捧げるために生まれてきた。吸血鬼として目覚めてから彼への想いだけで埋めつくされている。気を抜くと彼のことしか考えられなくなる。


今すぐ私の全てを奪って。


って違う!今はそんなこと考えてる場合じゃない。
私の血が全身に巡り、安定するまで恢は目覚めない。その間にここから離れなくちゃ。

「行こう、リート」

「御意」

後ろ髪を引かれる思いで気を失っている恢から離れる。

もう、振り返れない。
ここから先私を支えるのはたった一つの感情。それ以外は、いらない。

溢れだした涙で前が滲む。
一歩後ろを付いてくるリートには見えていないけど、気付かれてるんだろう。何も言わないのはリートなりの優しさ。今だけは見逃してもらおう。

収まりきらなくなった涙が頬を伝う。
この涙と共に気持ちも流れ出てくれればいいのに。

全部……、全部消えてしまえばいいのに。
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