Bloody Kiss
最低限の荷造りを終えて屋敷を出ると痛いくらいの日射しが降り注いでいた。
恢が目覚めるまであとどのくらいの猶予があるのだろう。できればもう一ヶ所寄りたいと思っていたんだけれど、時間はあるのだろうか。

「リート、もう一ヶ所だけ、いい?」

振り向いて後ろに控えるリートに訊ねる。

「……お望みとあらば」

一瞬躊躇ったけど了承してくれた。
もし寄り道している間に恢が目覚めたとしてもまだ逃げられるということだろう。守護者の身体能力は吸血鬼の中でもずば抜けているから本気で逃げれば追い付かれることはないだろう。

ふと日差しを遮る陰が現れた。
見上げるとリートが日傘を差し出してくれていた。

「ありがとう」

そう言ってリートの手からその柄を受け取る。受け取った直後ふわりと体が浮いた。

「えっ!?何っ!?」

びっくりしながらも自分の置かれている状況を確認する。どうやらリートにお姫様抱っこをされているようだ。

「目的地までお連れします」

軽く地面を蹴ったかと思うとあっという間に目的地まで着いていた。

「……本当に速いのね」

守護者の身体能力の高さは知識として知っていたけど、こんなに速いとは思わなかった。

そっと地面に降ろされた。

「……」

そこにあるのは五日前に訪れたばかりの両親の墓。

「……ごめんなさい」

暴走のせいとはいえ、私は二人の命を奪ってしまった。もう彼らの娘ではいられない。
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