Bloody Kiss
赤い液体を全て飲み込んだ直後、心臓がドクンッとおかしな動きを始めた。身体中が熱くて痛くて苦しくて呼吸すら儘ならなくなる。

持っていた小瓶が滑り落ちて床で砕け散る。

苦しくて立っていられなくなりその場に崩れ落ちる。咄嗟についた手はあろうことかさっき落とした小瓶の上にあった。

『ぁっ…!』

ガラスで切れた手から赤いものが溢れだす。それを見た瞬間激しい喉の渇きに襲われた。

『アリア?すごい音がしたけど大丈夫か?』

背後から聞こえてくる父親の声。

血の匂い。
近づいてくる足音。
人の匂い。
血が脈打つ音。


アァ、オイシソウーー


座り込んだ私を心配したであろう父親の手がそっと肩に触れた。
その瞬間振り向いてがら空きになっている首筋に噛みついた。

『……っ!?』

一瞬の空白の後、思い切り突き飛ばされた。予想外のことだったから対応できずに尻餅をついてしまった。
立ち上がる前に口の中に残る温かい血をゴクリと飲み込む。

『タリナイ……』

モット、モットチョウダイ。

『うぁぁぁ!バケモノ!来るなっ!!』

家の中に逃げ込む男。追いたいのにドアが邪魔して入れない。いくらノブを回しても開かない。

『アケテ』

力任せに叩いているとドアが壊れて外れた。

人の気配がする。
それも二つも!

『来るなーっ!!』

オーバーなリアクションで逃げ惑う男。逃げても無駄なのに。
一瞬で距離を詰めて首筋の血管を目掛けて牙を立てる。ブチブチッと肉を貫く音。狂ったように喚く男の声と甲高い悲鳴。溢れだす命の滴。

オイシイ。デモ、マダ。
マダタリナイ。

自立することができなくなった男から手を離すと、そのまま床へ落ちていった。
窓ガラスに映る赤い瞳。
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