紺色の海、緋色の空
男にとって女をセックスで喜ばすことは、何物にも代え難い自身の「存在理由」の証明そのものなのだ。

早紀の体を知っているのは僕だけだった。

僕だけのものだった。

他の男に抱かれる早紀の姿など想像できなかったし、したくもなかった。

ずっと一生僕だけを見つめ、愛し、僕だけが触れることのできる大切な宝物だと信じて疑わなかった。

早紀のことは誰よりも分かっているつもりだった。

僕たちは双子だから、彼女のことなら何だって理解してあげられる自信があった。

だけど早紀は抱かれた。

僕じゃない男に犯され、狂わされ、体をくねらせて腰を振っていた。

僕はただ見つめるしかなかった。

僕の存在理由が、音を立てて崩れていくような気がした。

彼女に僕は必要ない。

僕は消えるべき存在なのだ。

目の前の光景を網膜に焼き付けながら、僕は血の涙を流して別れを告げた。

だから……

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