紺色の海、緋色の空
代わりに僕は本棚の隅で埃をかぶっていた図鑑を引っ張り出した。

172ページ目に、ようやく目当ての動物が載っていた。

ソイツは絵はがきの写真と同じように、アリクイに似た長い鼻をひくつかせ、ノソリとした風貌で佇んでいた。

『バク』

あるいは『獏』

それは、空想の中で夢を食べて生きるという不思議な動物だった。

中国の言い伝えで、悪夢を見た後に「この夢を獏にあげます」と唱えると、二度と同じ夢を見ずにすむのだとか。

それが本当なら、僕が見る夢など獏にあげてしまいたいものばかりに違いなかった。

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