2つの世界
「言われたことは全部信じるんでしょ?」
「…。」

優花はなにが言いたいの?

「麻莉が今、信じないって言ってくれたのはあたしを信じてくれてるから?」
「そうだよ。」
「じゃぁ…悠斗くんは信じれないの?」
「あ…。」

そうだ…。

あのとき…。「冷めた」って言った悠斗の顔…。

無表情なのは変わんない。だけど、いつもの無表情じゃなかった。感情がない、中身が空っぽみたいな…。

そんな無表情だった。

普通の人に違いはわかんないかもだけど、あたしはわかる。

あたしは…。悠斗を信じきれてなかった。

でも…。

「優花、ありがと。でも…気づくのが遅かったみたい。」
「なんで?」
「今の悠斗は…怖い。きっとあたしなんて忘れてるよ。」
「聞かないとわかんないじゃん。」
「ねぇ、優花。もう…1年くらいたつよ。あの日から…。」

知らない間に時は流れた。1年も空っぽでいたあたしと悠斗。

「遅いよ。なにもかも。取り返しがつかないくらい…。」
「麻莉…。」

遅すぎだ。あたしは、ずっと誤解してたの?

でも…時がたてば嘘も本当になるかもしれない。

もう、あたしが悠斗になんか言う資格なんかない。
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