Memories - 年の差恋愛 -
慌てて自分で頬を拭うと、流れた涙のほかに乾いた感覚があって。

私、寝ながら涙を流していたのかも。

きっと今、すごい顔をしているに違いないけど、それどころじゃない。

必死で涙を拭っても止めることが出来なくて。

「佐智子ちゃん」

「いやっ」

そっと飛田さんに両腕が背中に回ってきたけど、思わず両手で彼の胸を押してしまった。

「触らないで…」

両手で顔を覆い、涙をこらえることをあきらめた私は声をあげて泣きじゃくってしまった。

さっきの電話からわかったのは、飛田さんが病院へ一緒に付き添ったのは別れた元奥さんだったんだということ。

その人が一人暮らしをしていたから、あれこれ手伝ってあげたこと。

…その人の家まで一緒に行ったこと。

すべてが予想にもしていなかったことで、とにかくショックで、そして苦しい。

いつまでも泣いている私を、飛田さんはずっとそばで見守ってくれて。

触らないでと言ってしまった私の言葉に従って、私に触れようとはしなかった。
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