Memories - 年の差恋愛 -
ココアに口を付けると、ちょうどいい熱さで。

口の中に広がる甘いココアが少しだけ気持ちを落ち着かせてくれた。

ココアを飲みながら、どうしてなんだろうって考えて。

何も後ろめたいことがないから、一緒にいたのが元奥さんだって言わなかった?

言うほどのことじゃないって思ったのかも。

マグカップをテーブルに置いてから、もうひとつ手渡された氷入りのタオルをそっと目元に当てる。

…冷たい。

「佐智子ちゃん、ごめんね」

そんな私のすぐ近くにいる飛田さんから、謝りこの言葉が聞こえてきて。

どうしたらいいのかわからない私は、タオルで目元を覆っているので彼の表情を見ることはできないけど。

私のそばへ来て、いつもならそっと抱きしめてくれるのに私が拒否をしたから触れることもなくて。

勝手だけど、それはそれで寂しいなんて思ってしまう。

私は何がショックだったの?

飛田さんがほかの女の人と一緒にいたこと?

…そうじゃないよね。

倒れた人がいるのに、飛田さんが放っておくような冷たい人じゃないことはわかっている。

それがたまたま元奥さんだっただけで、きっと知らない人だったとしても心配して一人になんてしなかったんだと思う。

わかっているけど、でも。
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