ネオン
2
新宿区歌舞伎町。
区役所通り沿いのビルの3階に、あたしは居た。
小さいテーブルの上にはウイスキーとミネラルウォーターが2本、
それとグラスが置かれている。
勢いだけで、19年の人生で初めてキャバクラに来た。
目線を何処に置いていいのかわからない。
メールが来ているわけでもないのに、携帯をパカパカさせてみたりした。
「ごめんなさい、お待たせして。申し遅れました、僕、佐藤望っていいます。」
さっき出会った小柄な男はそういって名刺を出してきた。
役職も、会社名も何も無い名刺。
本名なのか、偽名なのか、それさえもよくわからないけど、
とりあえずあたしは丁寧に両手でそれを受け取った。
「よかった、お姉さんに声をかけて。うん、やっぱ可愛いよ。」
「はぁ・・・。どうも・・。」
あたしはなんて答えていいのか分からない。
「あはは、緊張してますよね。今店長が来るので、もう少し待ってください。」
そういうと佐藤は席を立った。
3分くらいすると、今度は大柄で、肌が黒い、胡散臭い顔をした、
いかにもといった感じの男が現れた。
「どうも。こんばんは。店長の青木です。よろしくね!」
軽いノリ。
そんな感じで青木という人は私の向かいの椅子に腰をかけた。