ネオン
「えーっと、まず、これに名前と住所。あと簡単な経歴とか書いてもらえるかな。」
そういうと履歴書のような紙をテーブルの上に置いた。
あたしは言われるがままにあたしのことをその紙に記した。
「うん、オッケー。ありがとう。矢神琴音ちゃん。19歳か。
この仕事初めてなんだ?」
「はい。」
「どうして今日ここまで来たの?」
「えっと・・・。さっきのお兄さんに・・・誘われて。最初は無視してたんですけど。」
「うん。で?」
「神崎さやかちゃんのファンなんです。」
「あ、そう。で?」
「で・・・。まあ、正直、なんとなくですかね。」
あたしは苦笑いしながら答えた。
青木さんはあたしの顔をじっと見た。
「うん。顔はね、オッケー。むしろ、さやかより可愛いよ。スタイルも最高。
あとはやっぱ、トークなんだよね、この仕事。」
あたしは青木さんの言葉を真剣に聞く。
「うちはね、歌舞伎の中でもトップクラスの子しか雇いたくないんだよね。
顔も、トークも含めて。
さやかはどっちもずば抜けてた。
だから今あーやって注目される子になった。
佐藤の連れてくる子にはずれはないんだ。外見はね。
どうかな、琴音ちゃんは。自信とかある?」
なんだか芸能界に入るためのオーディションのみたい。
ここまで来た。
あたしの高いプライドが、後には引けない気持ちを高揚させる。
「はい。あります。」
何を根拠にそう言えたかは解らないけど、
あたしは自信満々にそう答えた。