准教授 高野先生のこと
しかしながら――
気分はあくまでも気分なわけで……。
先生の手をひく?先生と手をつなぐなんて、んなぁ大それたこと……!
このチキンな私に出来るわけもなく。
「お昼、鶏料理とかどうでしょうか?」
「えええっ!」
何気ない先生の提案に、思い切り過剰反応してるし……。
「あ、苦手でしたか?それとも気分じゃなかったかな???」
「やっ、いややや、違うんですっ」
先生がなんとも絶妙に“鶏”なんて言うから。
実はすべて見透かされているんじゃ?なんて、びっくりしてしまっただけ。
何しろ私はビビリな“チキン”だから……。
「と、鶏料理がいいですっ」
若干、共食いの感は否めないけど。
非常に微妙な間隔を空けつつ高野先生の隣りを歩く。
先生は――
「ここ、抜け道らしくて。けっこう交通量が多いんですよ」
そうして私にさっと場所を譲ると、今度は自分が車道側を歩き出した。
こんな風に気遣われること、研究室の先輩や同級生の男の人達ではあり得ない。
もっとも相手が私だからしないだけで、他の女の子には紳士なのかもだけど。