准教授 高野先生のこと

連れてきて貰ったお店はこの辺では評判の焼き鳥屋さんだった。

美味しいお酒も置いてあって、夜の営業がメインのお店なのだという。


「ここ、来たことありませんか?」

「へ?」

先生の質問の意図がよくわからなかった。


「大学からも遠くないんで、研究会のあとなんかにけっこう利用されるんです」

なるほど……。

先生は“並木先生のお気に入りです”と、さらに私に教えてくれた。

残念ながら私はまだ並木先生に連れてきてもらったことがなかったけれど。

「そのうち連れてきてもらえますよ」

先生がおしぼりで手を拭き拭きしながらにっこりと笑う。

「そのときは、今日のことは忘れて並木先生に初めて連れてきてもらったことにしてくださいね」

「えっ……」

一瞬のうちに頭の中をいろいろなことが駆け巡った。



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