准教授 高野先生のこと

高野先生のお誕生日が知りたかった。


免許の更新手続きは誕生日の前後1ヶ月の2ヶ月間に行うから。

ひょっとしたら、もう過ぎてしまったかもしれないし、まだこれからかもしれないし。

もしも、まだこれからなら……。

どうしても何かお祝いをさせてほしくて。

私は渋々、間の抜けたぼへっとした顔写真の運転免許証を差し出した。

「これで、なんとかお願いします……」

先生のゴールドとは異なり、まだ初回更新も迎えていない私のはグリーンだ。

お粗末な写真の免許証をしげしげと眺める先生の顔はとても優しかった。

「あどけない……感じですね」

先生があんまり大事そうに、慈しむような目で見ていたから――

私は嬉しくて恥ずかしくて、もったいないような気持ちでいっぱいになった。


「はい、どうぞ」

先生は、とくに恥ずかしがる様子もなく、自分の免許証をひょいとよこした。

「先生、フッツーですね」

なんかちょっと拍子抜け。

先生の写真は、まんまキレイな証明写真といった感じで。

履歴書に貼ってあっても問題ないような、好印象の証明写真。




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