准教授 高野先生のこと
結局、今日もまた先生にご馳走になってしまった……。
私はもう心苦しく恐縮至極。
なのに先生が――
「急な誘いにつきあってくださって、本当にありがとうございました」
逆にお礼なんかをおっしゃるから、私はさらに困ってしまった。
私のほうこそ、今日は思いがけずこんなに楽しい時間をすごさせてもらって。
今日だけでなく、いつもいつもまたいつも素敵な時間をいっぱいもらって。
今日こそ何かお礼がしたかった。
「何か、お礼をさせてもらえませんか?」
だからって、なんつうダイレクトな聞き方だろう……。
もっと気の利いた聞き方もあっただろうに、なんてもう遅いけど。
“おやまあ”という表情で私を見下ろす高野先生。
最近知ったのだけど、先生と私の身長差は18センチあるらしい。
「お礼、ですか?そうですねぇ……」
先生が、ふーむと何やら思案する。
お礼をしたいと言っておいてなんだけど、こうして考えてくれるなんて少し意外。
だって、またいつものように遠慮されてしまうかも……なんて思っていたから。
先生がいったいどんなお礼を希望するのか?
どきどき、わくわく。
「それじゃあ……」
そして、先生は私が思わず腰をぬかすような、とんでもないことを言ったのである。