准教授 高野先生のこと

それはもう楽しそうに話しつつ、その学生さんに限りない賛辞をおくる高野先生。

ちなみに――

藤森先生は社会言語学の先生で、的場先生は近世江戸時代の文学の先生。

二人とも“ぺーぺーな”高野先生なんかとは違うとーってもえらい先生だ。


藤森先生は調査でフィールドに出る度にいろんな人と話している“会話のプロ”。

何より人と接することが好きだし、会話を楽しみたいタイプの人。


的場先生は気さくで洒落のわかる明るい先生で、いかにも江戸文学が専門って感じ。


由利先生は……。

まあなんていうか、大御所の嫌なイメージを地でいってるというか。

講義の最中の脱線は自慢話ばかりで、学生の欠席と遅刻にだけやたらうるさい。

出ていれば必ず単位をくれるので、わかりやすくていいといえばまあ……。



先生は褒め誉めついでにその学生さんについてこんなことまで言い出した。

「ああいうギャップってすごくいいですね。

もちろんきちんとした文章を書けるだけの国語力があるという前提ですが。

いつも“ぶっこいた”話し方をする女性が、いきなり趣き深い長編のラブレターなんかくれたりしたらもう……。

一撃必殺です。

僕なんていちころです」


先生の夢見るうっとりとした横顔。

それを複雑な思いで眺める私。


だいたい――

そんなこと楽しそうに話されても私は……。







< 132 / 462 >

この作品をシェア

pagetop