准教授 高野先生のこと

高野寛行先生の“初戀”はものすごーく微妙だった。


“微妙”という言葉は最近では汎用的に色んな場面で使われているけど。

初恋が微妙って……。

微妙な初恋って……。

“微熱”なんて言葉は甘酸っぱい表現として初恋に似つかわしいけれど。

“微妙”なんて、それこそ微妙すぎるし……。


先生はその微妙な初恋の話を静かに語った。

「僕は小学4年のとき同じクラスで席も隣りだった内田絵美ちゃんのつもりなんです。

けど……公式には保育園のときで……。

やはり同じ組だったミユキちゃんなんです」

“公式には”って???なんじゃそりゃ!?

さっぱり意味がわからんちん……。


「公式というのは動かぬ証拠があるからなんです、これがまた」

先生はちょっと困ったふうに釈然としないなって表情(かお)をした。



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