准教授 高野先生のこと
こんなとき――
もちろん私はどうしていいのかわからなくって。
「講義のときも、あれくらい大きな声でお願いします」
いつもの先生に負けないくらいに、トンチンカンなことを言った。
そんな自分が可笑しくって、情けなくって。
だけど不思議と許せちゃったから……。
私はただ俯いて泣きながら、へらへらと笑った。
嬉しすぎて、恥ずかしすぎて。
照れくさくて、困り果てて。
先生をとてもじゃないけど見ることなんてできなくて。
だけど、ずっとずっと俯いているわけにもいかなくて。
ゆっくりおずおずと先生の顔を見上げると――
「僕、なんだね?」
先生が眩しそうに目を細め、じっと深く私を見つめていた。
もう、ホントのホントの限界だった。