准教授 高野先生のこと

それにしても私ってば早とちりの空回り?みたいな。

なんだか一人で勝手に動揺しちゃって。

完全な勘違い、取り越し苦労……。


真中君はポケットからじゃりっと小銭を出すとちゃりっと数えた。

「OKでいいよね?」

「あ、うんうん」

私は慌てて、こくこくこくと小刻みに頷いた。


「並木先生はいいって言ってたし、ボクが高野サンにメールしとく」

「えっ、あっ……」

一瞬“私が言っとくよ”という台詞がのどまで出掛かって――

だけど手前で呑み込んだ。


「じゃあ、ごめんだけどよろしく」

「うん。“あのこと”もお願いしてみる」

「あぁ、“あのこと”ね……」


あのこと……。

“高野先生との勉強会に参加したい”

私が高野先生のところに通っているのを聞きつけた真中君。

そんな彼からの切実なお願い。




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