准教授 高野先生のこと
完全に私の失言だった。
「ごめん、なんか……」
私はただどうしても先生との二人きりの時間を守りたかったのだ。
もちろん、それが自分勝手な我侭だということは重々わかっていたけれど。
真中君の表情が急に険しく変わった。
「なんかさ、まずいことでもあるわけ?」
疑り深く怪訝そうな表情をして私を見てる。
「いや、あの……私は全然OKなんだけど……」
あぁ、苦し紛れの言い訳の始まりはじまり……。
「人数増えて先生の負担が増えて迷惑になったら心苦しいっていうか、その……」
本当は――
高野先生は真中君の申し出を快諾するに決まっていた。
勉強したいという学生を、自分を頼り慕う学生を拒むわけがないのだから。