准教授 高野先生のこと
先生のおうちは8階建てのマンションの4階にあった。
「3階までなら階段って選択肢もあるんだけどね」
4階じゃさすがに気後れするよと苦笑して、先生はエレベータのボタンを押した。
清潔な、衛生的な、クリーンな。
初めて訪れた先生の部屋の印象は、まずはそれだ。
必ずしも完璧に片付いているとか生活感がないとか、そういうわけではない。
だけど、とても掃除が行き届いていて、塵や埃は見当たらなかった。
ある意味、潔癖空間?みたいな。
帰宅するとまず、空気清浄機をオン!
どうやらそれが先生のいつもの習慣らしい。
たぶん加湿器が一緒になったタイプの空気清浄機。
「一応、喋る商売だしね。それに僕、あんまり喉とか強いほうじゃないから」
どうしてもちょっと神経質になるんだと、先生はやや自嘲気味に笑った。
あんなにも憧れた先生の日常、私生活。
今、その空間に自分がいる。
すごく嬉しいのに?嬉しすぎて?まだ正直ピンとこないけど。