准教授 高野先生のこと
おうちでの先生はオープンすぎるくらいオープンで、且つなんというか……。
誤解を恐れずに言うなら、気遣いゼロって感じ?
“もう何でも好きにしてちょうだい”
“我が家だと思って勝手になさい”
完全に、そういうノリだった。
「お風呂、先にどうぞ」
先生は私に勧めつつ、自分は何やら何処かへ出かける支度をしていた。
「僕、ちょっとコンビニ行ってくるけど。明日の朝、パンでいい?」
「えっ、あ……パンで……パンがいいです!」
「うん。詩織ちゃんは何か買ってきて欲しいものとかある?」
「ないです、大丈夫です、ぜんぜん」
私は玄関へ向かう先生のあとにトコトコついて歩いていった。
「あぁ、バスタオルはクローゼットの中にあるから適当に使って」
「ええっ」
「大丈夫、すぐ見つかるはずだから」
そういう“ええっ”じゃなかったのに……。
「じゃあ、行ってくるね」
先生は私の困惑なんぞは全く意に介さず、あっさり出かけてしまった。