准教授 高野先生のこと

お風呂から上がって、眼鏡がバッグの中であることに気がついた。

私はいつも昼間はコンタクト。

だけど入浴まえには抜いてしまって、うちの中では眼鏡っこ。

とりあえずパジャマに着替えて、まずは眼鏡をとりにいく。

髪が濡れたままだけど、これではあるであろうドライヤーも探せないもの。


不案内な部屋をよろよろと、心もとなく進んでいく。

やっと……どうにかバッグにたどり着いた。

無事に眼鏡をかけて、ほっと一安心。

いつもの視界を取り戻して、ひょこひょこと洗面台に戻る途中で――

「ただいまー」

ちょうど帰ってきた先生と鉢合わせ。


今夜ここへ来てからむこう、私は先生の日常を見まくりだった。

だけど――

「あ゛っ……あの、私……」

私の日常の素の状態、無防備な姿を先生に見られるのは初めてだった。



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