准教授 高野先生のこと

たぶん思い切り目を瞑った瞬間とほぼ当時(だったと思う)に――


一瞬、唇に柔らかな感触を覚えた。


ほんの僅かの間、唇が触れ合うだけのキス。


私はゆっくりと目を開けて、それから改めて驚きながら目をぱちくりさせた。



「ハイ、おしまい」

「ええーっ!」

「“ええーっ!”ってそんな……」

「だって……」

いっぱいいっぱいで、もう訳わかんない状態だったし、一瞬だったし。

「緊張しててよくわかんなかったです」

しかしまあ随分とずけずけとした物言いだ。


「確かに、揮発性が高いというか」

先生が気を悪くした様子もなく、くすくすと笑う。

揮発性……液体なんかが蒸発して、あっという間になくなっちゃうって?



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