准教授 高野先生のこと

「深呼吸して肩の力を抜きましょう」

「無理です」

「困らせないで下さい……」

どうもおかしな雰囲気になりつつあった。


「平常心が大切です」

「そんな無茶な……」

「……」

「わかりました、って」


基本、私はずっと俯いたまま。

ときどき、ちらっちらっと上目遣いで先生の様子をうかがったけど。

やっぱり、うっとりと見つめるなんて無理な感じで。

とにかく、ひどく緊張していた。



「じゃあ、目を閉じて」


俯きかげんのまま、ぎゅっと強く目を瞑る。

まるでぶたれる気配を察したときの子供みたいに。



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