准教授 高野先生のこと
洗面台で二人で並んで歯をみがく。
先生は目の前に小さい時計をぽんと置いて――
「夜は必ず10分磨くんだ」
などと素晴らしい心がけを披露した。
8分くらい経ったところで――
「はほひふぅはぁあ(あと二分かぁ)」
なんて一度ぼやいたけど、気を取りなおして10分ちゃんとみがききった。
先生が毎晩寝ているベッド。
見て一発で無印良品だなってわかった。
だって、私のうちのもそうだから。
先生はカーキ色の清潔そうなカバーのかかったベッドを見下ろした。
「二人は少し窮屈かも、セミダブルだと」
ふだんシングルで一人寝ている私にはどれくらい窮屈なのかがピンとこないけど。
「布団、敷いてあげようか?」
ほらまた、そうやって……。
この状況で冗談みたいなことを言う先生に私は心の中で一人ごちた。
先生はおもしろがって私の心を試しているとしか思えない。
「先生がそうしたほうがいいと思うなら、私はぜんぜんそれでいいですよ」
内心カチンときていたけど、逆につとめて優しく穏やかな笑顔で言ってやった。