准教授 高野先生のこと
コドモのヒロユキくんと違ってオトナのヒロユキくんは――
恋にとても慎重で臆病だったのである。
だから当然、とてもじゃあないけど、
“好き同士は一緒に寝るんだもーん”
なんて講釈をたれて、好きな女の子を押し倒して、手篭めになんてできなかった。
ヒロユキくんは大好きなシオリちゃんの為に、今まで人知れず頑張ってきたのだ。
時には、逸る気持ちにブレーキをかけ。
また或る時には、秋の海に愛を叫び。
けれども――
大好きなシオリちゃんは、ぼーっとしてる女の子なもんだから……。
なにしろ、恋愛検定8級で。
キス技能検定の受検資格だってようやく得たばかりだし。
だから――
ヒロユキくんの頑張りを、なけなしの勇気を、よくわかってあげられなくて。
そんなどんくさいシオリちゃんだけど、さすがに今はわかってる。
今度は自分が頑張る番なのだ、と。
私は意を決して、もそもそと近づいて先生の体にぴたりとくっついた。
そうして顔を見ないでいいように、顔を見られずすむようにして話し始めた。