准教授 高野先生のこと

「“勘”というか“感じ”というか、そういうのが全く無いってわけじゃないんだよ。

ただそれは、動物的な直感というよりは経験によって培われたものなんだよね。

多くはないにしろ僕だって、過去に恋をしてその恋を失ってきた経験があるわけで。

そこで色々なことを否応無しに学習させられてきたからね。


こんな言い方、比較されているみたいだって、君は気を悪くするかもしれないけど、

相対的に判断してるっていうのも本当……。

正直、一緒にいてこんなにも、安心できて寛げる女性は君が初めてなんだ。

君といると何ていうか、不思議と危機感のようなものを感じないんだよね。


僕は人間関係において用心深くて臆病なほうなのに、君とはすぐに打ち解けられた。

価値観とか波長とかフィーリングとか色々な言い方があると思うけど。

とにかく“合う”って感じがするんだよ。

今まで出会った女性の中で、こんな風に思えるひとはいなかったよ。


君は僕を穏健な性格の人間だと思っているようだけど、必ずしもそうじゃない。

僕が君に優しく穏やかに映っているとしたら、そうさせているのは君なんだよ。

二人の関係性が、君の目の前にいる僕を作っているといっても過言ではないんだ。


僕との将来を真剣に考えて欲しいなんて、ダメもとで言ってるわけじゃないんだよ。

僕だって一応、人生かかっているからね。

勝算はあるつもりだし、君が出す答えにすごく期待してる。

独りよがりなんかじゃね、一緒にいて心から安心できるわけがないと思うんだよ。

僕が寛いだ気持ちになれるのは、君が同じような気持ちでいてくれるから……。

きっと、だからなのかなって思ってる。

そうは言っても君は若くてこれからの人だから、ね。

僕なんかより良い相手を待ってみたいと思うかもしれないし。

結婚てそういう意味でも賭けなんだよね。

どこまで探し続けるか、いつまで待ち続けるか、どこで手を打つかってね。

まあねぇ、まったく勝手なことを言わせてもらうと、

僕は意外と自分には博才があるのかもって思ってるよ。

このタイミングで君に賭けようなんてね」


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