准教授 高野先生のこと
過去に恋愛経験のない私には踏まえるものがないのだ。
「私に豊富な恋愛経験があったらなぁ」
「えーっ」
“そんなぁ”って顔で高野先生が苦笑する。
「詩織ちゃん、まさか僕を置いてよそへ恋愛修行の旅に出たいなんてこと……」
「ないですから!」
私はむきになって自信満々否定した。
そんな自分に“ん?あれ?”っと何か引っかかったけど……。
その自信と確信の意味をあまり深くは考えなかった。
先生はまあまあと鼻息荒い私を宥めるようにゆったり笑った。
「結局は絶対評価なんだよね」
「絶対評価?」
「過去の人と比較したところで過去に戻れやしないし。
未来の誰かに期待したところで、それを確かめにいく術はない。
結局はその時そのときで相手を絶対評価するしかないんだよ。
目の前にいる相手が自分にとって納得できる相手かどうかってことを、ね。
相対評価はあくまでもただの参考なんだ。
本当はそんな参考要らないのかもしれない。
だけど過去を変えることはできないし、人はあるものは見てしまうからね。
そしてそれを拠りどころにしたりするわけだ。
今よりもっと理想的な相手に巡り逢える確率を計算してみたり。
僕のように、これ以上自分に合う相手が現れるわけはないと確信してみたりね」