准教授 高野先生のこと

先生と一緒にいるのは、同年代の男の子といるよりもずっと――

ずっとずっと、楽しくて。

ずっとずっと、安らいだ。


それでも、食事を共にするという行為は何故だか妙に緊張して……。

そんな具合なものだから――

せっかくのお料理なのに、私はのろのろ……ちまちま……。


「鈴木さんの分もお箸をもらいましょうか?」

「え?」

私が顔を上げると、先生はニコっと笑ってくれた。

「僕は根っからのお箸の国の人なんです」

そう言って、高野先生はお店の人にお箸を二膳頼んでくれた。

先生のそんな細やかな優しさが――

とてもとても、嬉しくて。

すごくすごく、苦しかった。




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