准教授 高野先生のこと

食事を終えてから、私は化粧を直しに席を立った。

そして戻ってくると、すっかり会計を済ませた先生が待ち構えていた。


「すぐ、出られますか?」

「あ、はいっ!あの……えと……」

お礼の言い方も、タイミングも何もかもわからなくて。

あのあの……えとえと……。


そんな私を見た先生が楽しそうにくすりと笑う。

そして――

「労をねぎらわせていただいてありがとうございます」

可愛らしく私にぺこりと頭を下げた。

「あっ、どういたしまして」

反射的に答えてしまったけれど――

ん???

絶対に何か間違ってるし……。

お礼を言うのは私のはず……。

すごく困って救いを求めるように先生を見ると――

先生はやっぱり楽しそうにくすくす笑っていた。


先生と一緒にいると調子が狂う。

おもしろく、おかしな具合いに調子を狂わされてしまう。

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