准教授 高野先生のこと

身に着けるものって好みがあるから難しいと思ったけれど、思い切って冒険した。

「お父さんにもあげたことないんですよ」

「ホントに?ありがとう。嬉しいなぁ」

先生は箱の中からネクタイを取り出して、しげしげと眺めた。


「ええと、お店の人がね、とってもよく相談に乗ってくれたんです。

ちょっと年配の女性の店員さんだったんですけど、ね。

仕事が何関係かとか、持ってるスーツの色とか、背格好とかなんか色々聞いてくれて。

それで一緒に選んでくれたんですよ。

あの……すごくいっぱい種類があって、びっくりしちゃいました。

だから絶対一人だったら迷って悩んで大変だったなって思ったりして……」

なんだかもう勝手に照れて、一人でぺらりぺらりと喋っていた。


「お礼と言ってはなんだけど……」

先生はごそっとポケットに手を入れて何かをそっと取り出して――

「よかったら、持っていて欲しいんだ」

“何か”を私の手のひらに乗せてぎゅっと握らせた。

小さくて?硬くって?ちょっと冷たい?


これって……???


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