准教授 高野先生のこと

ぼちぼち参加者が来る前にと、高野先生は私と真中君に業務内容の説明を始めた。

「結婚式の受付みたいなものです」

真中君はぽかんとして、私はきょとんとして、二人で目が点状態になる。

私の友達も真中君の友達も、ほとんどが社会人1年生。

挙式する友人もいなければ、当日の受付を頼んでくるような友人もまだいない。

せいぜい親戚に呼ばれて親と一緒に出席するのが結婚式。

「そのうちね、“寿貧乏だよぅ”なんて泣き笑いするようになりますよ」

高野先生は参加費の受取用のつり銭を数えながら、ふふふと笑った。


以前、バイトで理系の学会の受付をやったことのある私には今日の仕事はほぼ楽勝。

一人目の演者の発表が始まって少し経つと、受付を訪れる人波もぱったり途絶えた。

領収した参加費の金額確認を終え、やれやれふぅと一息つく。

そこへ――

そーっと教室を出てきた高野先生が、デジカメを持ってやって来た。

「一枚撮らせてくださいね」

私と真中君は一瞬“え?”と驚いたけど、すぐに並んでかしこまった。


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