准教授 高野先生のこと
「あの頃は、なにしろ若かったからね……。
二人とも、自分のことをもっと知ってもらえばうまくいく、って。
そう信じて疑わなかったんだよね。
だから、うまくいかないときは知ってもらう為の努力がたりないからだ、って。
彼女はとにかくモノをはっきり言う人でね。
それに、滞米生活が長かったせいもあってかとても自己主張が強かった。
しかも、相手にも同じようにそれを求める。
だから、僕にいつもイライラやきもきしていたね。
彼女は彼女で、僕に本音を言わせようと、僕を感情的にさせようと躍起になって。
僕は僕で、頑なに冷静さを保とうと意地になって応戦して、さ。
お互いにまずは相手の考えに合わせてみようなんて少しも思わなかったんだよ。
性格も正反対でね……周りの人たちからは――
“どうしてつきあってるのかわからない”
なんて、よく言われていたっけ。
ただ、お互いに尊敬する部分があったし。
自分にはないものが刺激的で魅力的に思えていたんだろうね、きっと。
ケンカするたびに、ケンカするほどに、二人の距離は近づいているって。
そう信じて頑張っていた頃もあったんだよ。
そうして関係を維持する努力をするのが恋愛なんだって思ってたとこもあったし。
だけど……それがね、だんだんと……」