准教授 高野先生のこと

礼拝堂はすでに集まった学生たちで3分の1くらいがうまっていた。

こうなった今、私の計画では水原先生を挟んで3人で並ぶこと。

少しでも寛行さんから離れるために。

なのに――

「鈴木さんは真ん中ね」

「え゛っ」

寛行さんが絶妙のタイミングでひょいと私の手をひいて――

「何か問題でも?いいじゃないですかぁ、両手に花で。ね?水原先生?」

「というよりも、鈴木さんという花をぼくらが取り合ってるみたいですね」

「言われてみれば、本当に」

無残に阻まれた私の計画。

笑いあう二人の先生たち。

清らかで透明な心の水原先生と、モーレツに曇った……いや、黒い心の高野先生。

だいたい彼はなんでそんなに平気そうにしていられるのか。

私が何かやらかしはしないかと不安にならないのだろうか?

例えば、うっかり“寛行さん♪”なんて呼んだりしないか、とか?

けれども――

ひやひやも何も寛行さんはむしろこの状況を楽しんでいるというか……。

水原先生の前でぼろを出さないように緊張する私を見て喜んでいるとしか思えない。


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