准教授 高野先生のこと
一抹の不安をもやもやずるずる引きずりながら、ついに立ち寄り地点へ到着。
“高野先生”は一瞬目を見開いて驚いたけど――
「あれー?鈴木さんじゃないですかぁ」
すぐに、営業用か?演技派か?と言いたくなるような表情で応戦?してきた。
「高野先生、こんにち、は……」
「おや、お二人はお知り合いでしたか」
「今はもう彼女は僕の後輩ですから」
寛行さんが“ねーっ”とでも言うように、わざとらしく私を見て意味深に笑う。
まったく、この人は……。
「なるほど。高野先生はY大のご出身でしたね。それで先輩後輩というわけですか」
「勉強会でもいつも一緒ですし。ね?鈴木さん?」
また、そうやって……。
絶対にこの人はサドだ……秋ちゃんの言うとおり。
「あの、そうなんです。その……いつも、お世話になっていて……」
「そんなお世話だなんて。僕のほうがいつも勉強させてもらっているくらいで」
一瞬、ほんの一瞬だけど――
彼がフッと唇の端っこで意地悪く笑ったのを私はもちろん見逃さなかった。
むぅぅぅぅ、寛行さんめーっ……!
我々の水面下のやりとりを、水原先生は全く気づいていないご様子で――
「そうですか。鈴木さんは熱心な学生ですからね、ぼくもわかりますよ」
いつもの先生らしく、ゆったり上品に微笑まれた。
ああああ、痛い、痛すぎる……。
この居た堪れなさ、居心地の悪さと言ったらない。